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4-12 空っぽ

1人になって封筒を見下ろすと、薄暗い黒い感情が沸き起こってきそうになる。 なんだか色々と考え始めると絶望してしまいそうで、首を振り封筒をテーブルの上に置いて ナナミの後を追いかけた。 ナナメの部屋のドアは開けっぱなしになっていて、ありゃー?というナナミの声が漏れ出ている。 部屋を覗き込むと、思わず目を見張ってしまった。 「…っ、なんだこれ…」 部屋はほとんどもぬけの殻だった。 あんなに本や書類や謎の紙束が大量に積まれていたのに、 中央にパソコン机がぽつんと置かれ 床にはいくつかの段ボール箱が。 クローゼットはそのままだが、壁一面あった本棚もほとんど何も残っていない。 部屋に備え付けてあった収納スペースにナナミは潜り込んでいるらしく 彼女のふわふわのスカートだけが見えていた。 「ナナメちゃん断捨離ブームなんかな? まさかぼくのまで捨ててないでしょうね…!?」 ヨコは怖々と部屋に足を踏み入れ、そのすかすかの部屋を見回す。 なんだか、変な動悸がした。 自分が知らない間に、 いつの間にか、無くなっていっている感覚。 「おあああ!あったあった!よかった!」 絶望しかけた心にナナミの叫び声が邪魔をしてくる。

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