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4-13 空っぽ

彼女は何かの袋を引っ張り出してきて、中から赤いレースのグローブを取り出し確認している。 そしてそれをまた大事そうにしまうと、収納スペースのドアを閉じた。 「船長!ナナミちゃんの目的は達成されました!」 ナナミはそう言って何故かびし、と敬礼をしてくる。 「そう…ですか、よかったです」 ヨコは頷いて、しっかりしなくては、と自分に言い聞かせた。 ナナメの手紙には、必ず戻ってくる、とあったし。 いつまでも大好きです、とも。 それは信じなければいけない言葉だけれど。 「……真壁サン…ぼくにはよくわからないけど あいつは人を振り回す天才だから、 いちいち真面目に取り合ってたら死んじゃいますよ」 ナナミはそれでもどこか青い顔をしているヨコに首を傾ける。 その心配してくれているような表情は、ナナメにとても似ていて なんだかますます悲しくなる。 「そーだっ!ライン交換しときましょ! なんかあったらぼくを頼ってくれてもかまわんぜ?? それにほら、今後もきっとお世話になるんだろうし!」 ナナミはそう言ってヨコの腕を叩くと、ケータイ持ってくる!とぱたぱたと走っていってしまった。 かなり気を遣ってくれたらしい。 ヨコは部屋をもう一度見回して、ほとんど何も残っていない彼の痕跡を探した。 「…信じて、いいんだよな……?」

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