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4-14 空っぽ
それから何日か経ってもナナメは帰って来ないし、連絡一つくれなかった。
だけど居た堪れなくて、なんでもないメッセージを送ってみたりして
無事でいてくれることを願っていた。
さすがに既読は付けてくれていたが、どこにいるのか誰といるのかさえも分からず
ヨコは静まり返った部屋で鬱々と過ごしていた。
彼がいないから料理を作る気も失せて、久方ぶりにコンビニ弁当を食べる羽目になったし
彼のいないベッドは広すぎて寝付けなくて、寝不足の顔を晒して仕事をしていたから
ミナミ達にも心配された。
いくつか原因を考えたら、部屋の片付き具合から察するに
彼はもしかすると、小説家を辞めるつもりなのかもしれない。
袖野さんは知っているのだろうか、聞いてみたい気もしたがもしも彼がまだ何も伝えていなかったらと思うと気が引けてしまう。
その理由はどう考えても自分でしかないし、そう思うと深いため息が10分おきに繰り返されてしまう。
折角の金曜日の夜も、いつもは嬉々としてスーパーに寄って食材を買いだめ
凝った晩御飯や翌日の朝食の仕込みをしていたところだが
そんな気はとても起きず、早々に自宅に帰ってきてはソファでぼうっと項垂れていた。
仕事だっていっぱいあるはずなのに全然手がつかないし、全てのことが億劫になってしまう。
彼がいないだけでこんなにも自分はダメになってしまうのかと笑いたくなる。
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