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4-17 逃げ出した場所

車は軽のワゴン車だったが、側面には達筆な感じで書かれた何かのロゴが貼り付けられていた。 その文字を見るとなんだか複雑な気持ちになって肩を竦めながら 助手席に乗り込んだ。 彼女は静かに車を発進させる。 「…元気にしとったか?」 「うん…おかげさまで…」 久しぶりに姉と2人で話していて、ナナメはそわそわとしてしまいながら窓の外の景色を見つめる。 「みんなも、元気?」 「まあ、相変わらずじゃ」 「…そっか。…ナナカちゃんは?」 「今保育園に行っとる」 「…そうなんですね…保育園なんてできたんだ…」 随分と時が経っているからそれは当然かと思うのだが、 生まれた時以来会っていない姪っ子がもう保育園時とは驚きだ。 「旅館も相変わらずですか?」 「そうじゃの…最近は海外からのお客さんばっかりじゃ インバウンドっちゅーやつじゃの 七助もオンライン英会話習い出して」 「随分と国際的になったんですね…」 ナナメの実家は代々この島で続く旅館だった。 今は姉が若女将となり旦那と共に取り仕切っているようだ。

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