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4-20 逃げ出した場所
四鹿家の居住スペースは旅館と繋がっているとはいえ別に建てられている建物だ。
昔は住み込みの中居さんや板前などがたくさん居たためか、別添えの建物といっても結構広い。
ナナメが使っていた部屋もまだ残されていて、久々にそこに足を踏み入れると複雑な気持ちになった。
自分の部屋とはいえ、家を出る時にあらかた処分してしまったからほとんど物は残っていなかった。
3畳半の小さな部屋は、今見るとますます狭く感じる。
古めかしい勉強机が唯一の窓の下に置かれていて、そこからは海が見えた。
「……はぁ」
ナナメはため息をこぼしながらも机の前に座った。
椅子も机も今の自分にはもっと窮屈に感じて、随分と贅沢になったものだと感じる。
窓の外の海は相変わらず、お前は一生そこにいるんだとでもいうように広く見えて。
実家にいた頃は毎日のように、絶対にここを出ていってやると思っていた。
そして、2度と戻ってくるものか、とも。
それは今も思ってはいるけれど。
ふ、と机の引き出しを開けると学校の卒業アルバムやらなんやらが入っていた。
そして昔のノートも。
「…懐かしい……」
ぼろぼろになったノートを捲ると、当時考えていた小説の構想や実際の文章が殴り書きされていた。
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