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4-23 あなたの元へ

早朝とはいえ土曜日の、東京の駅はとんでもない人混みだ。 そんな中でもありがたいことに彼女の姿はすぐ見つけられる。 レースとリボンでいっぱいのピンク色のワンピースに、ツインテール、そして同じ色合いでレースがついた頭飾り。 靴は高いヒールで、ピンク色のキャリーケースを片手に、もう片方はゴージャスな日傘とハートの形のバッグを持っていて、一際存在感を放っている彼女にヨコは近付いた。 「おいーっす!」 彼女はヨコに気付くと、その格好にはあまり似つかわしくない感じの声をかけてくる。 「お待たせしました…」 「イエイエ。それよか真壁サン、本当に行くん??」 ナナメの妹のナナミは、ヨコを見上げては複雑そうに笑った。 「すみません…付き合ってもらうことになって…」 「ぼくは全然構わないけどぉ…まあいいや!行きながら語ろ!」 ナナミはそういうと、日傘を畳んで駅の構内へ歩き出した。 ナナメの居場所がわかったと彼女から連絡があったのがつい昨日の夜。 どうやらナナメは実家に戻っているらしかった。 行くのであればついて行ってもいいとナナミはいってくれて、自分なんかがいいのだろうかという気持ちよりも 1秒でもいいからナナメに会いたいという気持ちが勝ってしまったのだった。

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