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4-31 すべきこと
祖母と別れ、ナナメは借りた車で勝手にドライブして
港近くの防波堤を1人で歩いていた。
子どもの頃も、家に帰りたくない時はよくこうして彷徨いたりしたものだ。
自分は一体何に向き合えばいいと言うのだろう。
ヨコにも、小説にも、取り巻く環境にも、
たくさんの人たちにも、自分なりに一生懸命向き合っているつもりだった。
確かに逃げてしまった時もあるけど、それでも結局追いかけてくれるから
自分は向き合わざるを得なくなって。
それが本当に感謝すべきことでもあるのだけれど。
防波堤の端まで来ると、ナナメはため息を溢して
ずっと向こうまで広がる海を眺めた。
あの頃の自分を思えば、本当に、
何でも夢が叶って、随分と幸せになってしまったものだ。
ここで泣きながら、都会を夢見ていた自分が見たら羨ましがるだろうか。
そんなことを思うと変な気分だ。
そしてふ、と隣を見下ろすと過去の自分の幻影が見えた気がした。
防波堤の端っこで体育座りをして、叫び出したいのを我慢していた自分を。
「……自分……」
そういえば、聞いていなかったことがある。
ナナメは、涙を拭いながら立てた膝を机にノートにぐしゃぐしゃの文字を走らせる幼い自分を見つめた。
「……ねえ、なんで、書いてるの……?」
恐る恐る投げかけた質問に、
彼は涙で滲んだ瞳でキッとこちらを睨んだ。
「 」
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