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4-33 すべきこと

「ハァ…、足早すぎるってえ…!」 叫び声が聞こえて顔をあげると、防波堤の遥か向こうから人形のような格好の人物がへとへとになりながら歩いてきていた。 そんな格好でこんなところにいる人間は1人しか考えられない。 「…ナナミ……?」 そういえばなぜヨコはここが分かったのだろうか。 ナナメはヨコの腕から逃れようともがくが彼は全然離してくれない。 「真壁サン……陸上でもやってたん……?」 ようやく追いついたナナミは腰を折って乱れた呼吸を整えている。 「何で、ここに?」 「ナナメちゃんを追いかけてきたんよ…ナナミちゃんは付き添い、真壁サンの」 いつの間に2人が知り合いになったのかも、何故こんなところまではるばると2人でやってきたのも なに一つピンと来なかったが、ナナメはいい加減離してほしくてヨコの胸に手をついた。 「ヨコさん…大丈夫ですって、俺ここにいますから」 しかしヨコはびくともしない。 そんなに心配をかけてしまったのかと大変申し訳なく感じてしまう。 「俺を置いていかないでくれ……」 波に消え入りそうなか細い声に、ナナメは彼の背中を優しく撫でた。

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