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4-45 四鹿家の洗礼
「ただいまぁ」
先頭のナナミがそう声をあげながら建物内に入っていった。
普通の家の玄関のようだが大きな下駄箱があり沢山の靴が並んでいる。
「……狭いとこですけど、どうぞ」
「お邪魔します…」
ナナメは困ったように微笑んでいて、ヨコは今更緊張してしまいながらも彼に続いた。
美しく磨かれた木張りの廊下にはガラス戸や障子で仕切られた部屋がいくつもあった。
突き当たりを右に曲がるとまたドアがあり、左側の戸には従業員の心得的な紙が貼られていて
どうやら旅館内に続いているらしい。
「あらぁ!ナナミちゃん!帰ってきたん!?!」
廊下の先で女性にナナミは捕まっていた。
着物姿で、髪を一つにまとめていてザ女将さんといった所だ。
しかし見た目は若く綺麗で、ナナメととてもよく似ていた。
「またそがいな可愛らしい格好して!
攫われたらどうするん!?」
「攫われるって……もうぼく25だよ…」
「何歳でも関係ないじゃろ!?」
女性はナナミに怒っていたが、こちらに気付くと目を丸くする。
「あらっ…?」
そして上品に口元に手を当てると、じっとこちらを見つめてくる。
ヨコはペコリと頭を下げた。
「ナナエさん、あのー…ええっと…
この方は真壁さんといって…訳あって俺と住んでくれてる方です…」
ナナメが紹介をすると、女性はこちらに近付いてきて
妙にキラキラした瞳で見つめてくる。
長い睫毛に人形のように整った顔に陶器のような肌、明らかな四鹿家の血筋にもしや姉なのかと予想する。
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