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4-53 逃げて来てくれて。
「…俺が書けないのは、ヨコさんが優し過ぎるからですよ
俺のこと傷付けようとしないし…大切にしてくれるから」
「…?そんなの当たり前だろ」
「ふふ…そうですねえ。
そんなヨコさんだから、俺は全部無くしたっていいって思えるんです。
何においても、大切にしなきゃって思うから…」
彼はそう言いながらヨコの手を取ってそっと自分の頬に触れさせてくる。
「だから…側にいてってお願いするのは俺の方なんですよ?」
その頬を撫でながら、なんだか泣きそうになる。
「……なんでもなくなる俺と、居てくれますか?」
なんでもない自分の隣にずっと居続けてくれたのは彼の方なのに。
ヨコはその身体を再び抱きしめながら、頷いた。
「………俺が養います……」
思ったことをそのまま呟いてしまいながら、ナナメをメチャクチャに抱きしめた。
離さないように、見失わないように。
ナナメは抱きしめられながらまたくすくすと笑っている。
「もー甘えちゃうから変なこと言わないの」
「…甘えて欲しいんだが……」
彼といる安心感でバカになった脳が変なことを言い始めるが
ナナメは逃げたそうに腕を突っ張って、もー、と笑っている。
そんな風に彼が笑っていると、また自分は全て許された気になって
多分なんでも出来るんだろうなぁと思ったりした。
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