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4-58 永遠と一瞬
「…………ヨコさん…」
「ん?」
「手……握っててくれますか……」
「?…うん」
そっと、指が絡んできて、ぎゅっと力を込められる。
酒のせいかちょっとだけ体温が高くなっている彼の掌を感じながら、
ナナメはふわふわと頭の中に沸き起こってくる不思議な感覚を感じていた。
それはどこか、あのスイッチが入る前のような感覚。
「………。」
ナナメはポケットから携帯端末を取り出して、メモが残せるアプリを開くとそこに文字を打っていく。
片手で、不自由なはずなのにそれは無我夢中でひたすら文字を走らせて
どれくらい時間が経ったかも分からないくらい。
肩に重みを感じてはっと気が付くと、ヨコは眠りに落ちていて
ナナメの肩にもたれながらもしっかりと手を握ってくれていた。
「………ヨコさん、ありがとう…」
彼の頭に口付けながらも、ナナメは起こさないようにそのままの体勢を維持しながら
また携帯端末に向かった。
ハイスピードで都会へ向かいながら、
好きな人の香りと体温を感じて。
それはなんだか、永遠、みたいだった。
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