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4-59 触っていいの?

長旅を終え夜もそこそこな時間に2人は無事に自宅に戻ってきた。 ナナメはなんだか久々に家に帰ってきたみたいな気分だった。 荷物を置きに自分の部屋に行くと そういえばスカスカになっていたことを思い出す。 だけどもうあんまり悲しくなかったし、寧ろ清々しい気持ちさえした。 「……ナナメ」 開けっぱなしのドアの向こうにヨコの姿があった。 彼はどこか複雑そうな顔をしている。 ナナメは笑顔を浮かべながら彼の胸に飛び込んで、ぎゅう、と抱きついた。 「えへへ…びっくりしました?」 「…最初見た時…心臓止まるかと思った…」 「すみません…驚かせちゃって」 元々カオスだった部屋が急にスッキリしていたら確かに怖いかもしれない。 申し訳なく思いながらも彼に抱きしめ返してもらえると嬉しかった。 「いいけど…… 次からはちゃんと教えてくれ…手伝うから…」 「ヨコさん…」 ナナメは彼を見上げて、つま先立ちをするように顔を近付けてキスをした。 そういえばここ最近は仕事のことで引きこもっていたりしたし こんな風に彼に触れていなかった気がする。 「……触っていいの?」 ヨコはナナメの頬を撫でながら、そんな風に聞いていて 相変わらず表情筋は死んでいるらしかったが、なんとなく冗談ベースなんだとわかる。 「…もしかして…遠慮してたんですか?」 彼は、どうかな、と言うように首を傾けた。

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