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4-64 触っていいの?
「何…言ってるんですか…」
彼はナナメの脹脛辺りに口付けて、目を細めている。
「ヨコさんは…、俺のことこんなに幸せにしてくれてるでしょ…」
幸せにする、と言って本当にそうしてくれて。
追いかける、と言って本当にそうしてくれて。
いつの間にか嘘つきで誤魔化してばかりになっていた自分が恥ずかしくなるほど、彼は真っ直ぐに向かってきてくれる。
「俺のこと、追いかけてきてくれて…
俺の側にいてくれて…っ、俺を、幸せにしてくれて…
それが、どんなに凄いことか…俺にとってどんなに…欲しかったことなのか…」
何にもいらない、この人さえいれば良い。
そんなことずっと、わかっていたのに。
ナナメは彼の肩に触れていた足を、彼の首の後ろに引っ掛けるようにしてその身体を引き寄せた。
「俺はあなたしか欲しくないんですよ…っ」
近付いてきた彼の胸ぐらを掴んで更に引き寄せ、その唇を奪った。
好きとか、可愛いとか、愛してるとか。
大切にしたいとか、幸せにするとか。
言葉で言うのは簡単だけど、彼はずっとそれを体現してくれるから。
唇が離れると、ヨコは小さく笑ってくれた。
「…ふふ。うん」
愛おしそうに、
翳りなく輝く瞳は少しだけ滲んでいたけど、それでも真っ直ぐに見つめてくれている。
そうやって死んだ表情筋が緩んでいるのも、自分だけだといいのにと思ってしまうのに。
「…っ、もう…あなたって人は…」
ナナメはまた泣きそうになりながらも、彼の頭の後ろに両手を回し深く口付けた。
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