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act9:その後のふたり

 大倉さんと暮らし始めて、あっという間に1ヶ月が経った。職場が同じだから、生活のリズムも同じなので、それなりに不自由なく一緒に暮らせてる。まぁ不自由なく…だけど―― 「もう行っちゃうの? 早いんじゃないか?」 「しょうがねぇだろ。ここから離れた場所にあるトコで、食事の約束しちまったし」 「それって……俺と一緒にいたくないから、そんな遠くで約束したんじゃ」 「ちげぇよ! 客からの頼まれごとなんだ。仕事だと割り切ってくれって」  今まさに、出かけようとした俺の左足に抱きつき、つり上がり気味の一重瞼を更につり上げ、じと目で睨んでくる大倉さんに、盛大なため息をついてみせた。  同伴があると、毎回この状態なのである。以前にも増して、ヤキモチに拍車がかかった感じだ。 「大倉さん、これは仕事なんだ。店のために、俺は頑張ってるんだからさ」 「そんなの、分かってる。だけど……」  抱きついてる両腕に、ぎゅっと力が込められた。毎回、この状態なんだけど――困惑するしかないんだけど。 「秀彦、なるべく早く店に、顔を出せるようにするから。ガマンしてくれ、な?」  苦笑いしながらしゃがみ込んで、ふてくされてる唇に、ちゅっとキスしてやった。 「……分かった。我慢する。だけど1秒でも早く、帰ってきてくれよ」  掠れた声で言い放ち、俺の体に腕を回してきたと思ったら、いきなり床に組み伏せるとか(汗) 「っ……おっ、おいおい!」  毎晩飽きずに、抱いているというのに、まだ足りないといった感じで、シャツのボタンを手早く外し、隙間に顔を突っ込んできた。 「やめっ! こら…しご、と、にぃっ……行けない、だろ」  大柄な身体を両腕で外しかけたら、鎖骨に音を立てて吸い付く。途端に、チクリとした痛みを感じた。 「これでよし! さぁ行っておいで」  キスマークなんてつけても、意味がないのにさ。いらないことばっかりしやがって、まったく////  眉根を寄せながらシャツのボタンを直し、ひらひらと右手を振って、マンションを出て行ってやった。この後、俺たちの間に嵐が吹き荒ぶとは、思いもよらずに――

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