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第6話 世界一のお姫様
カツラは身バレのリスクを伴う。
故に地毛は長髪が鉄則。
ファリス・フレンフランは姫でも王子でも
罷り通るように育てられてきた。
近隣諸国にはその都度嘘八百を並べ
国民でさえもファリスが王子なのか王女なのか、はたまた2人いるのかもう死んでいるのか、曖昧なのである。
それが王の意味不明な教育方針であり強かな策略でもあった。
シアーゼはそんなファリスを思ってか否か
同じように髪を伸ばしていた。
ファリスはいたたまれなくて何度も切れと言ったりこっそり切ろうと奇襲を仕掛けたりしたが
全て無意味であった。
そんなこんなで2人は女装のエキスパートになってしまった。
彼の敵情調査により、
ライバルの姫たちは比較的若い娘が多いと聞き
長く伸ばした金髪を結い上げ、
やや大人っぽい印象で挑むことにした。
母のお下がりを脱ぎ捨て、
夜なべして縫ったドレスに身を包む。
お針子の修行もした事があるのでお手の物である。
抜けるような水色のドレスだった。
同じ色の髪飾りはおリボンとバラである。
我ながらモードの道でも食っていけそうな抜群のセンスであった。
「さすがファリス様...絶世の美女ですよ」
いつもより身綺麗にしたシアーゼが微笑んだ。
ファリスは鏡の前で入念にチェックした後、彼を振り返る。
「...よし、小娘なんかにゃ負けねえぜ」
にやりとファリスは赤い唇を歪めて笑った。
小娘と書いてライバルと読みます。
丁度ドアがノックされ、お時間です、と声がかかった。
「参りますか、お姫様」
シアーゼに差し出された手を取り
ファリスは歩き出した。
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