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第13話 祝盃と犠牲

どんな仕事でも達成できれば嬉しいもので。 ファリスは最初に用意された部屋よりグレードの高い部屋を用意されテンションが上がって 広いベッドの上を転げ回った。 「しゃーるうぃーだーんす〜ちゃっちゃっちゃらーちゃっちゃちゃらっちゃっちゃー!」 ファリスは大声でご機嫌に歌って1人で爆笑した。 あんな稚拙で背筋も凍るラブロマンス、 途中で笑い転げてしまいそうだった。 そんなものに騙されるなんて、純粋というか、なんというか。 なんて真面目な目だったんだろう。 きっと人を殺したこともない、 嘘さえついたこともないのではないだろうか。 ファリスは複雑な気分になりもしたが、 歌ってごまかすことにした。 「楽しそうですねえ」 不意に天井の板が四角く外れ、紺色の長い髪が降りてきた。 やがて生首がひょこりと顔を出す。 軽くホラーである。 「シアーゼ..もう開拓したのか..」 「隠しボスの部屋見つけちゃいましたよ」 言いながらシアーゼは忍者のように音もなく地面に降り立った。 この数時間でもう自分の庭にしてしまったらしい。 「上手くいったようでなによりです」 シアーゼは笑顔を浮かべ、 脱ぎ散らかされた靴を拾って揃えた。 「あったりまえじゃん誰だと思ってんの〜〜?」 ファリスはどんと自分の胸を叩くような仕草をしてケラケラ笑いながらまたベッドの上を転げ回った。 シアーゼは眉根を寄せる。 「まさか...お酒を召されたんですか..」 「あたぼうよー仕事の後の一杯は格別だぜい」 大工の棟梁のような男らしい生き様を見せるファリスにシアーゼはため息をついた。 ファリスは根暗なだけに酒が入るとテンションがおかしくなる。 それこそ大声で泣いたり箸が転んでもゲラゲラ笑ったり。 「こんな姿を見たら婚約解消されますよ。 お控えください。...ったく」 シアーゼは寝転がったファリスのドレスの裾をひいて素足を隠してやりながら呟いた。 こういう時自分は従僕なのだと思い知らされる。 「シアーゼぃ!おっどりましょ〜」 「うわっ!」 ファリスはシアーゼに飛びかかり無理矢理両手をとってくるくる回り始めた。 シアーゼは凄い力で振り回され、 頭がクラクラしたのだった。

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