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第15話 血塗られる予定の初夜

全ての準備が整い、ついに初夜がやってきた。 婚礼の儀を明日に控え、2人は一晩共にする。 そして明日からもずっと...... 本来ならばそうだ。 だがアッシュ・カミュー・リゼエッタ・トロイトはそんな幸せな明日を迎える事はないであろう。 本日でその華々しい命を散らすのだから。 「ファリス様…何か気掛かりがあるのでは?」 準備を整え、シルク生地の寝間着に身を包んだファリスにシアーゼは真顔で問いかける。 外の景色を眺めていたファリスは彼を振り返り苦笑した。 「…あんな純粋な奴に会ったのは初めてだよ」 言うまいとしていた言葉が出てしまった。 ここに来る前は、嫌な奴でありますようにと 願っていたが実際のアッシュは真面目で純粋だった。 人を疑う事も知らなさそうだし、初めての恋に戸惑ったり悩んだり喜んだりと初々しい。 ファリスの見てきた汚い大人の世界では出会えない人間だった。 「もしかして好きになっちゃいました?」 「そんなわけないじゃん…。でも、なんか… 今までは私がやらなくてもきっといつか誰かに刺されてたんだろうなっていうような奴ばっかだったからさ…」 強いて言えば罪悪感、だ。 泣いていた現国王。喜び湧き上がる国民。 自分の為にドレスを仕立ててくれたお妃。 気を利かせ様々なケアをしてくれる使用人達。 みんな、アッシュが好きで大切で動いている。 この国は平和で平穏で暖かくて。 それを、ただのくだらない私利私欲でぶち壊そうというのだ。 アッシュは殺される必要も、理由も何一つないただの善人だった。 何の罪もない、ただ大国の王子というだけの。 「王子ってだけで…、片方は理不尽に殺されて、片方は理不尽に殺すしかないなんてな…」 ファリスは、今自分がしなくてはいけないのは、その罪を背負う覚悟だ、と感じていた。 「…ファリス様は何も悪くないですよ。 なんならこのシアーゼが代わりに」 「いや、いいんだ。…ありがとう」 ファリスはシアーゼに微笑みかけ、彼の肩を叩いた。 わかっている。どれだけ駄々をこねても、自分は殺すしかないのだ。 「いざとなったらマジで私を置いて逃げろよ」 強い目で念を押した。 ファリスは唯一、自分をそういう風に想ってくれているシアーゼには逃げて欲しかったから。 だけど彼は、はい、とは言わなかった。

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