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第21話 従僕の仕業
「すみまっせーんたまにああなるんですよ。
お気になさらず。」
暴れるファリスを部屋に押し込めてアッシュとともに脱出したシアーゼは後手にドアを閉めながらも彼に微笑みかけた。
「...アッシュ殿下。
ご覧のようにファリス様は舞踏会の時のような
小鳥とお話し出来るみたいなお淑やかでお花畑な人間ではありませんが、よろしいのですか」
シアーゼはドアを押さえたまま、
アッシュを見据えた。
「あの時も可憐で美しかったが、
今の方が魅力的だと思うよ」
アッシュは恋する瞳をシアーゼを通り越して
ドアの向こうへと向けながら呟いた。
ああこりゃダメだ。
ライバル出現にシアーゼは溜息を零した。
それもかなり強敵と言える。
「...わかりました。
アッシュ殿下、俺はファリス様を守るために色々してきました。
数え切れないほど嘘も付いたし沢山殺した。
全ては彼のため、に。」
シアーゼは1度目を閉じ、アッシュをジッと見つめた。
その気迫に彼は押されたのか少し臆したように眼を見開く。
2人は暫く無言で見つめ合っていた。
そこには静かだが確かに、バトルの火蓋が切って落とされていった。
やがてシアーゼはドアから離れ俯きがちにアッシュに近寄った。
「...てなわけで、
大変まずい事しちゃいました!」
突然明後日の方向に明るい声を出したシアーゼに
へ?、とアッシュは素っ頓狂な声を上げる。
シアーゼはへらへらりと笑った。
「いやーだってまさかこんな事になるとは...
思わなかったというかなって欲しくないなと思ってたというか考えないようにしていたというか...」
呟きながらもシアーゼは黒い瞳を涼やかに輝かせアッシュを見上げた。
「お話ししますよ。俺たちが誰でどこから来たのか。知りたいでしょう?」
ゾクリと凍らされてしまいそうな程鋭く冷たい視線に、アッシュはとんでもない恋敵がいたものだと思った。
意識すらさせないような平坦な従者を装っていたのだろう。
大したものである。
アッシュは苦笑した。
「聞こうか」
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