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第24話 勇者スパイ
アッシュとシアーゼ、更にマルクが呼びつけられ
会議室で3人は話し込んでいた。
ファリス達の諸事情は事前にアッシュにのみ伝えマルクには伏せている。
西ソマトロアム皇国の脅威が迫っていることや、世界大戦の危機をシアーゼは伝えた。
「.....一先ずこの婚礼騒ぎでマグルシュノワズ
近辺は確実に侵略されるでしょうね。
騒ぎに乗じて大戦を進める気でしょう」
マグルシュノワズに戻るついでに集めてきた資料を見せながらもシアーゼは説明した。
機密文書の数々をどうやって手に入れてきたのか。大した男である。
「はあ、まあ前から怪しい動きはしてましたからねェ」
マルクは頬杖をつきながらも溜息を零した。
アッシュは腕を組んだまま黙りこくっている。
「いいんですよあんな国は放っておけば。
問題はこちらの出方ですから」
騒ぎを大きくしてしまった張本人シアーゼは淡々と言ってのけた。
実はマグルシュノワズにのみ伝えればいい婚礼騒ぎを西ソマトロアム側にリークしておいたのだ。
政略結婚となれば西ソマトロアムを裏切ったというのは明白だ。
暗殺が成功した後、西ソマトロアムの侵略で3国が潰し潰されをしている間に逃げようと思っていたのだ。
しかし今暗殺側が裏切った形になり完全に
西ソマトロアムをなんの意味もなく挑発しただけである。
「出来るだけ穏便にはしたいが...
備えられることは出来るだけ備えておこう」
抱えきれない事実に打ちのめされながらも
アッシュは重い口を開いた。
それが国であり政治というものである。
「シアーゼ、君の優秀な力を貸して欲しい」
「ええ。もちろん」
シアーゼはニコニコと微笑みを浮かべ頷いた。
全く、何を考えているか分からない男である。
ファリスを守るために世界大戦の引き金を易々と引いた男である。
しかも飄々としている。
恋も政治も次々に現れる難関に頭が痛いが、
耐えねばならない。
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