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第28話 滅びゆく国
シアーゼの策略を聞かされてもファリスは苦笑しか零せなかった。
用意周到な彼には感服だが、祖国が滅びるという一大事にも心はさして動かないのだった。
「帰らなくてもよろしいのですか?」
「別に..今更戻ったところで何もないだろ。
あの人たちだって自業自得だと思うし、
案外生き延びるかもしんないし...」
シアーゼもアッシュも侵略される前にマグルシュノワズに戻ってもいいと言ったが、
特に別れを告げたい人も取りに帰りたいものもあの国にはなにもない。
「それよか戦に乗じて"ファリス姫"は死んだことにしてくれよな。
未亡人ならまた結婚できるだろ」
ファリスにとってはそっちの方が重要だった。
今は姫の体調不良ということで婚礼の儀は先延ばしにされているが、国は思ったより盛り上がってしまい準備だけは着々と進められていた。
「俺は本当に結婚したいんだけど」
「男同士で出来るわけないだろバカ」
「法律改正すればいけると」
「この少子化の時代になに言ってんだよ」
アッシュは相変わらず酔狂な事を言ってくるが、今は引きつった笑みを浮かべているものの
いざとなればシアーゼがなにかしらしてくれるだろう。
そうこうしていると部屋がノックされファリスは1秒で組んでいた足と手を解きお上品に座り直した。
「失礼、アッシュ殿下」
ドアが開き軍服姿の男がアッシュを呼んだ。
2人は話しながらも部屋を出て行ってしまった。
閉められたドアをぼんやりと見つめながらも
ファリスはまた腕を組んだ。
「王子ってのは忙しいんだな」
「ファリス様ほどではないと思いますよ」
シアーゼが苦笑する。
確かに少し前までは寝る暇もないほど働いていたのだが、
今は絶賛引きこもり発動中である。
何不自由ない暮らしは初めてかもしれないというほどだ。
「どうなっちゃうんだろうな私たちは」
ぽつりと呟く。
さて、いつこの国からズラかろうか。
そのあとどこへ行けばいいのか。
ファリスにはまだ何もわからなかった。
「やっと自由になれますね」
シアーゼはそう言って微笑んだ。
自由。
ファリスは彼の笑顔を見つめながらもそんな言葉の意味を考えていた。
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