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第30話 自由と滅亡と策略のフラグ
「...変な奴」
こんな自分に、そんなことを言うだなんて。
笑い飛ばしてやりたい気分に反して涙は流れ続ける。
自分はきっと、"王子"ではないのだ。
最初からきっと。
王がいなくなっても
同じような形態さえあれば生きていける。
「私はしたいことなんかない..
そんなもの生まれてこのかた持ったこともない。」
不自由にこそ生きる意味を見つけていたファリスにとって、自由になることは恐ろしいことなのかもしれない。
ファリスは涙を乱雑に拭って、彼を振り返った。
必要とされたい。
それは暖かく無償の愛で守ってもらえるような、そういう意味ではなくて。
ただコマとして道具として、考える隙もないほど命令で心を埋めて欲しかった。
「なぁアッシュ..あんたが私を飼ってくれるなら、
私はずっとここにいてもいい」
あれほど止め方がわからなかった涙は消え失せていた。
月明かりに光る金色の瞳を見上げる。
王の命令は破棄されつつある。
そんな最中ファリスがすることは、生き延びることよりも新たな傭い主を探すことだった。
アッシュの頬に触れる。
「なんでもいいよ..スパイでも、暗殺駒でも、
性玩具でもいい。私を、使って...?」
小さく微笑みながら囁いた。
アッシュは目を見開き、こちらを凝視してくる。
「...何を、言っている..?」
彼の声が震えていた。
「私は自由なんて要らない」
命令されて虐げられて、
そうやって心を保ってきたのだ。
何も考えなくて済むから。
自分で、考えなくて済むから。
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