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第34話 秘密の共有
マルクはニコニコと何故か嬉しそうに微笑んでいる。
「いやん。邪険にしないでー仲良くしたいんだよ」
「信用ならない言葉ですねえ」
彼の魂胆がわからず、シアーゼは眉間に皺を寄せた。
「....シアーゼちゃんてさ、実は美人でしょ」
「........は?」
いきなりじっと見つめられ、真面目くさった顔をされるので
シアーゼは思わず彼の顔を見ては口を開いた。
「ほら、前髪あげたら…意外とカワイイ顔してる..」
呆然としているとマルクの手が伸びてきて髪を掻き上げられる。
顔が近かった。狭いから仕方ないのだが、
わざと長くしている前髪を避けられ慌てて彼の腕を掴んだ。
「ちょっ、やめてくださいって」
一体いきなり何をしようというのか。
体を離そうとするが、後ろにはもうスペースがない。
「落ちるよ」
そんなヘマはしないのだが、マルクはシアーゼの肩を引き寄せた。
不本意ながら彼の胸に飛び込む形になってしまった。
下手に抵抗しても危ないが、抵抗せねば逆におかしい事になりそうで。
「は…離してください…!ていうかさっきからなんで俺目線なんだよ仕事しろ…!」
仕方なくそう叫ぶがマルクはじーっと顔を近付けて見つめてくる。
青い瞳に自分の顔が映る。
シアーゼは何故か泣きそうな気分になっていた。
「…あの時の……ご婦人は、君だな…?」
「……へ?」
至近距離で呟かれ、シアーゼは素っ頓狂な声を上げた。
あの時のってなんだっけ、と数秒思考を巡らせる。
「何のことですか?」
そう言った直後に舞踏会の夜のことを思い出した。
何のことといった時は本当に覚えがなかったので嘘ではないが。
「こうして近くで見て確信したよ。
あの時俺に一服盛ったろ」
マルクの言葉にシアーゼは苦笑した。
その瞳には嘘はつけなさそうだ。
「…アッシュ殿下に告げ口でもします?」
「まさか。
あの時はこうなるって思わなかったんだろ」
彼の言葉にシアーゼは瞬きをする。
ん?こうなる、とは?と固まっているシアーゼにマルクは口の端で笑った。
「ファリス様男だから」
「…っ、な…!?」
目を見開く。
どうやらあの夜のことだけでなくファリスの正体もばれていたらしい。
シアーゼは彼に怪しまれぬように自然な手つきで片手でブーツの縁に触れた。そこには仕込み刃がある。
「いつからです?」
「んー、お披露目の時かなぁ」
舞踏会の次の日、彼女と結婚するとアッシュ殿下が宣言した、きっとその際だろう。
となればかなり早い段階でばれていたらしい。
迂闊だった。シアーゼは自分を呪った。
「まあまあそんな怖い顔しなさんな。
誰にも言ってないし言うつもりもないよ」
マルクは胡散臭い笑みを浮かべている。
そのまるで信用ならない笑顔の彼をシアーゼは睨んだ。
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