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第42話 木星からの刺客
屈強な筋肉を蓄えた大柄の男が空中を舞い、
やがて地面に倒れる。
「す、すげえ!あの中将がやられたぞ!」
「いやいやいやーまぐれだろ!実力No.3だぞ!?」
「まぐれで吹っ飛ぶかよ!」
兵達はざわついている。
「まぐれじゃないよ、弱い弱い。
ぜんっぜんダメだね。そんなんで国が守れんのか?え?一体どういう鍛え方してるのかね」
高らかな挑発が聞こえ、地面に倒れていた中将がうめき出す。
人溜りはサッとわかれ、その向こうから
よくわからない民族的な仮面を付け、
シャツにブーツにジャケットにと三銃士のような格好をした人物が細い剣を肩に担いで立っていた。
アッシュはその民族的な仮面に見覚えがあった。
ミミィグレースが土産で買ってきたものだ。
そしてその仮面の下から覗く
1つにまとめられた金髪にも見覚えがあった。
「.....おのれ..!突如現れた不審者め...」
「不審者じゃなくて、私は木星からやってきた
仮面騎士だっキラッ」
「ふざけるなあ!」
「そのふざけた輩にやられてんじゃん。」
仮面騎士と名乗った男は
くるくると剣をステッキのように振り回し兵達を煽っている。
「ぐぬぬ...マルク指揮官がいない今狼藉者にいいようにされてたまるか...!剣を!」
中将は起き上がり、兵が2人がかりで持ってきた大剣を手に取った。
剣を軽々と振り回しながら
仮面騎士へと突進していく。
「行くぞおおおお!」
演習場に響き渡るような雄叫びに、
兵たちは次々に歓声をあげる。
しかし仮面騎士は腕を組んで余裕でいる。
アッシュは思わず駆け出しそうになったが、
次の瞬間中将の進行方向から仮面騎士は消えていた。
「遅い遅いおそおい!」
仮面騎士はいつの間にか彼の背後に回り込んでいた。
素晴らしい脚力で地面を蹴り上げ、自分の身長の倍はあろうかという男の更に上へと飛び上がった。
「必殺!仮面アタックネオ!」
よくわからない技名を叫びながら
仮面騎士は剣を中将へと振り下ろした。
騎士が華麗に地面に降り立ち数秒後、鍛え上げられた屈強な大男は再び地面に肘をつきそのままばたりと砂埃をあげて倒れた。
「安心せい、峰打ちじゃ」
仮面騎士はぼそりと呟いて立ち上がった。
兵達が悲鳴にも似た声をあげ始める。
「すげええ!!!何したんだ全然見えなかったぞ!」
「ばっか敵讃えてどうすんだよ!」
「おい誰か医務室へ!」
兵達は慌てふためき、
白目を剥いて気絶している中将を数人がかりで運ぼうとし始めたり仮面騎士の撃退方法を思案し始める最中
兵の数名が呆然と突っ立っていたアッシュに気づいた。
「あ!?アッシュ様!?」
「なぜここへ...!?」
その叫び声を皮切りに兵達はさらに混乱し始める。
指揮官不在の中失態を見られて怒られると思ったのだろう。
一方で仮面騎士は腕を組んで余裕で仁王立をしている。
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