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第43話 2回目の...

全くとんでもない人だ。 ..と思いながらもアッシュは仕方なく彼に近付いた。 「ふぁり...じゃなかった、仮面騎士とやら。 一体どういうつもりだ?」 アッシュは少し大きな声を出し仮面騎士に声をかけた。 兵達は先ほどのざわめきが嘘のように言葉を飲み、辺りはしんと静まりかえる。 「ふん。大国の軍隊がどんなもんかと興味を持ってね。ってのはまあ建前で、要は暇なんで、 血湧き肉踊る戦いを所望」 仮面騎士は剣を肩に担ぎアッシュに近寄ってくる。 その異様な雰囲気を纏った存在に兵達は息を飲む。 木で出来た民族的な仮面が 今は不気味な化け物のようだ。 「では俺が相手をしてやろう。誰か、剣を」 アッシュはそう言い、片手を横に広げた。 「な、なにを...!」 「ご冗談でしょう!?」 「でもアッシュ様なら勝てるかもしれんぞ...」 兵達はざわつき始める。 それはそうだろう。 王子がいきなり不審者と対峙するなどあり得ない。 「ふん。いいだろう。 あんたには一回負けかけたからな、 お返しとしてぼっこぼこにしてやろうかね」 仮面騎士は準備運動するように腕を伸ばし、 片足を一歩後ろに引いた。 兵達がおずおずと差し出した剣を取り、 アッシュはその剣を軽く振って空中を斬った。 兵達がサッと2人のために場所を開ける。 仮面騎士は片足を引き、剣を肩に担いだまま動かない。 もう戦闘体制に入っているようだ。 アッシュも剣を両手に持ち、腰を落として構えた。 「......飛天御剣流...」 静かな声が聞こえた瞬間、 アッシュは咄嗟に剣を持つ手を引いた。 キィンと金属が触れ合う音がして、 仮面騎士の仮面がすぐそこに見えた。 「ってのはまあ嘘だけど」 「...早いな」 剣を押し返し、ひらりひらりと逃げる彼を追いかけた。 靡く金色の髪が見えたと思えばそれは残像で彼のスピードになかなかついていけなかったが アッシュは何故か胸に熱いものが込み上げてきた。 「その変な仮面剥がしてやる」 口角を吊り上げて笑っていると仮面騎士は視界から消えていた。 考えるより先に体が動き、しゃがみ込むと同時に後ろを振り返り彼の太刀を横向きにした刃で受け止める。 ギリギリと力を加えられ押し潰されそうになるが、アッシュは何故か笑ってしまっていた。 自分の剣が首に触れそうになった所でアッシュは全身の力を込めて立ち上がり、 彼がよろけた所で手首を狙って剣を振り上げた。 仮面騎士は素早い対応で避けようとしたが、 アッシュの方がわずかに早く手首と剣先が触れ合い その隙に彼の身体にタックルをかました。 仮面騎士の手から剣が離れ、アーチを描くように空中を飛び遠くの地面に突き刺さった。 「...ッチ」 彼の舌打ちが耳元で聞こえた。

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