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第45話 夫婦喧嘩

「ちょっと君たち何してるの!何の騒ぎ!?」 兵達の間から黒髪眼鏡の男が現れた。 男は静止している2人を見つけこちらにずかずかと近寄ってきては2人の間に分け入り剣を取り上げた。 「アッシュ様!なにやってるんです! ファリス様も!ちょっとそこ座んなさい!」 眼鏡の男は軍総隊の大将であった。 地面を指差され、 2人は顔を見合わせて仕方なくその場に正座した。 「夫婦喧嘩にうちの戦力を巻き込まないでもらえますか! 今大事な時期なのわかってます?」 アッシュとファリスは肩を並べ、すみません...、と謝った。 大将は兵達を振り返った。 「君達も! 誰も止めずにお祭り騒ぎとはどういうこと? 中将もお姫様に負けるなんて情けないと思わないの?」 全員その場に正座し、彼の正論に肩を落とす。 「すみませんでした....」 全員口々に彼に詫びを入れた。 大将は眼鏡をかけ直してはため息をつき、 腰に手を当てる。 「謝るのは僕にじゃないでしょ。 申し訳ないと思うなら少しでも国民の皆さんの為になるような 努力を惜しみなくして欲しいな。いい? ではさっさと片付けをしようね。 中将とお二人は医務室へ。迅速に!」 公務員の鏡のような言葉で説教をされ全員しずしずと動き始める。 アッシュは今更になって切った掌が痛み始め、 苦笑した。 全く、マルクは良い部下に恵まれているようだ。 隣を見るとファリスと目が合った。 彼は複雑な表情をしたがすぐに目を逸らして先に立ち上がったのだった。

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