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第49話 純粋なお姫様

「まあ、まあまあまあ...!」 不意に聞き覚えのある声が聞こえ、 ファリスは思わず立ち上がった。 ばん、と窓が開く音がし、振り返るとそこには 両開きの小窓を開け放った少女の姿があった。 どうやら気付かず窓の前に座り込んでいたらしい。 「ファリスお姉様!」 少女は嬉しそうな顔で微笑んだ。 そのアッシュに似ている笑顔にファリスは 引きつった笑みを浮かべるほかなかった。 「...み、ミミィグレースさま...」 「こんなところでなにをしておいでなの? もしかしてわたくしに会いにいらしたの? 屋根からだなんて、情熱的ですわ!」 ミミィグレースは両手を組んでうっとりと見上げてくる。 ここは彼女の部屋なのか、 しかし屋根裏のような場所である。 それよりも問題なのは自分が城の屋根にいることが彼女にばれてしまったことだ。 「う...えっとこれはその...お、お散歩を...」 咄嗟についた嘘が突拍子もなさすぎて ファリスは天を仰いだ。 「メリーポピンズのように!」 片手を空に伸ばして謎のポーズをとったが、 ミミィグレースはきょとんとしていた。 ああいかん...。ファリスは頭痛がした。 しかし彼女はすぐに金色の瞳を輝かせた。 「素敵!わたくしもご一緒しますわ!」 「えっ、いや、危ないですよ!?」 焦るファリスをよそにミミィグレースは 窓から這い出てきて屋根に腰掛けた。 なんて破天荒な..いや純粋なお姫様なのだろう。 彼女まで怪我をさせてはいけないので、 ファリスはいつでも彼女を助けられる体制を 取れるように座った。 「なんて綺麗な夕焼けでしょう..! 屋根の上から見ているから... それともあなたと一緒だからかしら?」 ホストのようなことを言い出すミミィグレースにファリスは笑顔を引きつらせた。

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