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第51話 恋とはこういうものなんだ?

「それがっ!恋よっ!!!」 「..へぁ?」 「素晴らしいわ!素敵だわ! そしてなんて可愛いのかしらっ!」 ミミィグレースはゆさゆさとファリスの身体を 揺らしてくる。 こい、こい...、恋? ファリスは瞬きを繰り返し、 彼女のらんらんとした瞳を見つめた。 この胸が締め付けられ、何度打ち消そうとしても頭の中に彼のことが浮かび上がり 身体が内側からムズムズして走り出したくなってしまう。 今まで感じたことのないこの一連の感情や衝動は、恋だというのか。 「私が......恋......を..」 ファリスは呆然と呟いた。 確かに今までファリスは恋というものをしたことがなかった。 恋の果てにある行為は勿論、恋を道具として扱ってはいたものの自分自身が落ちることはなかったのだ。 「そうよ! お兄様に本気の恋をしておいでなのよ...! ...でもあれ?確かお二人は愛し合ってたはずじゃ...」 ファリスは呆然と立ち上がり、 オレンジ色の空を見つめた。 「........そうか、恋か」 謎が解けた。 大変不本意な真実なはずなのに、 ファリスは妙に納得してしまっていた。 私はアッシュが好き。 恋という不自由という名の自由を、 ファリスは見つけてしまった。 「...わたくしの付け入る隙はないようですわね」 ミミィグレースは小さく呟き、 ファリスの美しい横顔を見上げたのだった。

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