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第63話 灰色の国
城とは名ばかりの鉄の要塞は灰色の空を背景に
ひんやりと重たい空気を放っていた。
その内部では数々の国の王達が顔を揃え、
戦に向けての会議が行われている。
「さて諸君。いよいよ決戦だ。
各自準備は万全かね?」
長いテーブルをずらりと囲った重苦しくも自信に満ちた面々に鋭い声が問いかける。
声の主は、上座に腰を下ろした西ソマトロアム皇国の皇帝、カイザーであった。
重苦しい鉄の鎧に身を包み、冷徹な形相の仮面で素顔は見えない。
各国の王達は固唾を飲んで彼の言葉を待った。
「我が国が天下統一を掲げているのは、
世界平和の為でも私利私欲の為でもない。
...退屈だからだ。物もありふれ国は平和、
力は甚大で強力...故に退屈なのだ。
戦争も1つのゲームのようなもの..、
あの大国リゼエッタであれば少しは退屈凌ぎにはなろう」
カイザーは乾いた笑いを上げ、手元のチェス駒を指先で跳ね飛ばした。
ピカピカに磨かれたテーブルをチェス駒はかけていき、やがて無様に横を向いて倒れる。
「さあ行け、リゼエッタ帝国を侵略するのだ。」
カイザーの言葉に王達は皆勢いよく席を立った。
「皇帝の御心のままに!」
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