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第66話 従僕の定め

物心ついた時、両親は両親ではなくなり 俺は、そういう目的のためにただ作られたのだと知らされた。 代々マグルシュノワズの王家に仕える家系では あったのだが、それは普通の召使の家系ではなく 王族に、より従順に仕えるようにと "作られる"ことから始まるのだ。 確かに多少なりともショックは受けたかもしれない。 だが、ファリス様に会ってそんなことはどうでもよくなった。 綺麗な金色の髪をなびかせ、エメラルドグリーンの瞳を静かに輝かせて 陶器のような指先で、俺の頬に触れ 「ごめん」 と一言泣き出しそうな声を出した彼を見て、 俺は 自分が彼のために作られたことが とても幸福で幸運で、 素晴らしいことなのかもしれないと思った。 暗くて狭くて、 牢獄のような部屋にシアーゼは戻ってきていた。 隣はファリスの部屋だ。 いつも帰ってくるたびに暴れたり大声で叫んだり泣いたりする声が聞こえていたっけなと思いながら壁に触れる。 今は何も聞こえない。 「......俺はファリス様についていくだけ... ファリス様を守るだけ...」 ぼそぼそと呟きながら壁に額をつける。 あの頃は、少し前までは、 2人でいれば世界は完成していた。 だが今は、縛るものもなくなりつつある。 ここにも2度と戻ってこなくていいのだ。 そして彼は多分、もう、守ってくれる相手を見つけている。 心ごと抱きしめて守ってくれるような存在に、 出会ってしまっている。 シアーゼは 唇を噛んで、ごん、と壁に額を打ち付けた。 「履き違えるな...っ俺は従僕だ、召使だ、奴隷だ...ッ」 心なんて、捨て去ってしまえればいいのに。 痛みが頭を冷やし、シアーゼは大きく長く息を吐き出して落ち着かせた。 自分は感情でわがままを言える立場ではないのだ。 ただ一つだけ通すとしたら、どんな形でもいいから彼を守る、それだけなのである。

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