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第69話 指揮官の思うとこ。
「さっきからなに訳のわからないことを...」
いったいこの男はなにを考えているのやら。
殺意や悪意を感じないからなんだか余計に怖く感じる。
シアーゼはとりあえず逃げようと彼の身体を
押そうとしたが、マルクの両手に顔を包まれて
気付けば唇を重ねられていた。
「.......君が泣くまでキスすんのやめない」
ぼそりと呟かれ、再び口付けられる。
なんだ?なんなんだこの男は?
キスをされながら、身体はベッドに倒される。
久々の固いベッドの感覚を遠くに感じる。
唇は離れ、じっと青い瞳に見つめられその顔を睨んだ。
「...虐めてるつもり?」
「まさか」
「なんということでしょう。性欲でとうとう見境がなくなってしまったんでしょうか」
「シアーゼちゃん以外と鈍い?」
マルクは苦笑してまた口付けてくる。
全く意味がわからないし、
だんだん腹が立ってきてシアーゼは彼の身体を強めに押して引き剥がした。
「いい加減にしなさいって、
何がしたいんですかあなたは!」
怒鳴ってやるがマルクは全く臆することなく
中途半端な体勢で尚顔を近付けてくるので
彼の胸に両手をついたまま力を加え続けなければならなかった。
「っだから、俺は!つまり、端的に言えばっ君がファリス様のことで頭がいっぱいなのを邪魔したいわけ!」
マルクが大きい声を出したので、
シアーゼは目を見開いてしまった。
「.....俺のことでいっぱいにしてやりたいのさ」
なぜか顔を赤らめながら呟かれ、
再びキスをされる。
熱い、唇。熱い体温。彼の体温だ。
彼の身体に触れていた指が、
無意識に彼が着ている軍服をぎゅっと掴んでいて。
"邪魔だな"と一瞬、思ったのだ。
それは果たして性欲なのか、自分に問う。
そりゃそうだろう、そうでなくちゃ困る。
「...シアーゼちゃん...」
キスの隙間で熱っぽい呼吸をされ、
服の上から身体が擦れる度に心臓が脈を打つ。
生理現象で、性欲で、
そんなことを言い聞かせるのだけれど
シアーゼは動くことができずに、
前髪を分けられ額に口付けをされてしまった。
「...俺、シアーゼちゃんのこと好きだ」
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