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第70話 最優先事項
なんでそう、
意味のわからないことをぽんぽん思いついて言えるのか。
シアーゼは眉根を寄せて、
その赤い顔を見上げ続けた。
「...................俺....は...、....男ですよ?」
「ええー..そこ?...みりゃわかるって...」
マルクは深くため息を零したがやがてくすくすと笑った。
なにがおかしいのか。全く理解不能なのに、
その笑みから目が逸らせないのは、何故?
連続した謎にシアーゼはただひたすら困惑していた。
「指揮官!」
不意にドアが勢いよく開き、
2人はそのままの体勢でそちらを見た。
切り込み隊長であった准将が立っていて
二人に気付くと呆れたようにため息をついた。
「お楽しんでる場合じゃないですぜ」
准将の言葉にシアーゼは現実に戻り思いっきり
マルクの腹に膝蹴りをお見舞いしてやった。
マルクは、ぐふぉ!?と変な声を出しながら吹っ飛ばされ床に倒れた。
「ソマトロアム皇国軍並びに同盟国軍数隊が
逆側からリゼエッタに侵略してるとの情報が」
准将は気にもせずに続ける。
しかしその言葉にシアーゼは目を見開いた。
「なんですって!?」
「あと何故か中将が再起不能らしいんであの国で今使えるのアッシュ殿下と眼鏡大将だけなんですが
子猫ちゃん2人じゃ時間の問題ではないかというのがオレの見解です。」
准将は人差し指と小指を立てて動物のような形を両手で作っては、怖いにゃあ、と真顔で言った。
「マジかよ!?」
マルクは飛び起きシアーゼもベッドから飛び降りた。
「あと捕虜に逃げられました」
「えええ!」
「なんで!?俺がやる...じゃなかったんですか!?」
「いやシアーゼちゃんを追っかけたかったから...ちょっとくらい放置しても大丈夫かなって...」
「あなた実はポンコツですね!?」
「言わんでやってください...指揮官は実は天然なんでさぁ」
「とりあえず!!!ファリス様がやばい!!!」
ドタバタと狭い階段を昇りながら、
シアーゼは泣きそうになっていた。
やはりこの男、邪魔しかしない!
「俺は先に行きます!」
シアーゼは舌打ちをして、狭い階段を登りきると叫びながら走るスピードを上げた。
「えっ、ちょ!?シアーゼちゃん!」
マルクの声を背中に感じながらもシアーゼは走った。
ファリス様、ファリス様....!
それでも彼が死んでしまっては、
何も意味などなくなってしまうのだ。
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