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第76話 変わらない関係

「...ちょっと待ってシアーゼは... 一緒に行く、よな..?」 そう聞くと一同は彼に注目した。 シアーゼはファリスが脱ぎ捨てたドレスを拾う。 「.....行ってください。」 「...やだ、なんで...シアーゼ!!!」 ファリスはシアーゼに掴みかかろうとしたが 彼に突き飛ばされ、アッシュに助けられる。 「なんで...お前ばっかり...いつも...」 ファリスは助け起こされながら呟いた。 「履き違えないでください。 俺は従僕で、いつだってあなたを守る為に存在しているんですから」 彼の眼は冷たかった。 いつも、そうだ。彼は突然いなくなってしまう。 そしていつも、何事もなかったように笑顔で戻ってくるのだ。 何事もないわけないのに。 それでも、そんな風に立場で線を引かれると ファリスは言い返せなくなる。 「アッシュ殿下、いい役回り譲ってやってんですから、 ちゃんと遂行しろよ」 シアーゼは3人を指差すと、ドレスを担いで タンスの上に飛び乗り天井のふたを開けた。 「シアーゼ...っ!」 天井に吸い込まれていく彼にファリスは叫んだ。 「大丈夫ですよ、ファリス様。 俺はそう簡単に死にませんから」 シアーゼはそう言って微笑むと行ってしまった。 ファリスは両手を握りしめる。 わかってる、わかっている....これがそれぞれの役目なのだ。 どんなに側にいて、色んな感情を共有したくても 彼は最終的には家族でも友達でもなく、従者という場所に戻っていく。 それが正しいことだと分かっているのに、 歯痒くて。無力な自分に苛立つ。 それでも今するべきことは嘆くことではない。 しっかりしなくては。 泣き出しそうになる自分に必死に言い聞かせて、 呆然としていた2人を振り返った。 「...行こう」

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