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第77話 燃える城
美しい城は、半分闇夜に溶け込み、
もう半分は火の手が上がり轟々と燃えていた。
海の上からそれを眺めて、
ミミィグレースはしきりに声を殺して泣いていた。
ファリスは、シアーゼが服に忍ばせた仕込み刃を取り出し髪を切った。
金色の長い髪は目立ちすぎてしまう。
おそらくシアーゼは、
自分かミミィグレースのふりをして時間を稼ぐつもりだろう。
「...ソマトロアム皇国はより被害が少ない状態で国を手に入れたい。
ゆえに街や塀を削るよりさっさと頭を刈り取って丸ごと貰おうという寸法で、あわよくば交渉を持ちかけて従わせる...」
はらはらと金色の髪が海に流れていく。
ファリスは身を寄せ合い
絶望の表情をしている2人を振り返った。
「.....アッシュ、多分私よりお前の方がこの戦況を切り開く術を持っている。
だから今はプライドは捨てろ。
生きて、何を優先して守るべきか考えるんだ。
ミミィグレース、あなたも」
2人の肩に触れながらファリスは彼らの顔を交互に見た。
なくしてしまった時の絶望は、ファリスは何も持たないからわからなかった。
シアーゼの為に自分がブレてはいけないと言い聞かせ続けているだけにすぎない。
自分だって何が一番大事かもわからないのに。
「ファリス.....」
アッシュに縋るように見つめられ、ファリスは微笑んだ。
一番..、かどうかはわからないけれど。
「...私に生きろって言ってくれたのはお前だろ」
ただ生きているだけで誰かを救えるとは思わない。
それでも生きていないと、何かを救うことはできないのだ。
アッシュは何度か頷いて、それでも涙が溢れてくるようだった。
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