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第79話 滅私奉公

マルクの体をロッカーに収め、衣服の端などがはみ出ないか入念にチェックした後左耳のピアスを外した。 赤い石のついたピアスを弄ると中から2粒ほどの小さな錠剤が出てくる。 シアーゼはそれを口に含み、彼に口付けた。 「……っ、ん」 マルクは察したのか歯を食いしばって開けようとしなかったが、彼の髪を撫で、耳に触れて舌で歯並びをなぞるとだんだん解けていく。 すかさず舌をねじ込んで、唾液で溶かした錠剤を彼の口腔に流し込んだ。 「…、ん…んん"」 マルクは苦しそうに身動ぎをしたが、顎を掴んで角度を変え彼の喉の奥へと流してやり、ようやく口を離した。 「そんな顔しないで…悪役になった気分ですよ」 涙でぐちゃぐちゃになったマルクの顔には、苦笑してしまう。 シアーゼはロッカーのドアを掴んだ。 「…っ…待て…!」 「ファリス様たちのことよろしくお願いしますね… どうかシアーゼのお願い聞いてください」 シアーゼはマルクの頬に口付けて、 それ以降彼の言葉を待たずにドアを閉めた。 念のため鍵をかけ、口元を拭う。 「…シアー…ゼ」 掠れた声が聞こえたが、 シアーゼは唇を噛んで使用人室を後にした。 何も思うことはない。 何も、思ってはいけない。 時間がないのだ。感情など抱く暇もない。 ずっとやってきたことではないか。 何故か そう言い聞かせなければならないのだった。

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