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第84話 祈り
放心していたマルクであったが、
すぐにシアーゼが全員をここへ逃がし助けたという出来事に絶句した。
それ故に彼は1人で敵に捕まったのだ。
唇を噛み締め、
今すぐ助けに行きたいという衝動を抑えた。
時間、時間を稼ぐと言っていた。
彼はそれを着実に遂行している。
自分たちがしなければならないのは、もっと別のことなのだ。
必死に耐えていると、
人混みをかき分け、王妃が走ってきた。
「マルクさん...っ!あの子達は...
アッシュは、ミミィグレースは..!?」
「...いないんですか!?」
王妃の悲痛な叫びにマルクは目を見開いた。
そして数秒後、不意に思い出し胸ポケットに手を突っ込んだ。
かさりと何かの紙に指先が触れ、
マルクは王妃に微笑みかけた。
「.....大丈夫です。彼らなら...無事です」
まだきちんと安否を確認したわけではなかったがそう伝えると、王妃は両手で顔を覆って泣き始めた。
突然平和は揺るがされ、散り散りになってしまった。
絶望で叫んでしまいたくなるような心地のなか、マルクは両手を握り締め、
今は祈るしかなかった。
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