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第88話 お姉様
シシィ国は代々女王が収める国であった。
現在はエイリアス姫の母である、アクアム女王が統治している。
やたらと露出の高い白いドレスに身を包んだアクアム女王は、2人が部屋に入るや否やにやりと笑った。
「よく来たなファリス」
「...ご無沙汰してます」
「まったくだ!貴様は連絡1つよこしもせん。
文の1つでも認めてやったらエイリアスも喜ぶぞ?」
「あはは...」
ファリスは苦笑して、ちらりとアッシュを見上げてくる。
助けを求めているような眼差しにアッシュは一歩前に出て跪いた。
「..お初にお目にかかります。
リゼエッタ帝国のアッシュと申します」
「アッシュ王子、貴殿もよく参られた。
この前は娘をお招き頂き感謝しているぞ。
良い社会勉強になっただろう。」
「いえ..」
アッシュは俯きがちに床を見つめた。
舞踏会でファリスと踊っていたのが遠い昔のようだ。
城はまだ美しく父も母も、ミミィグレースも、
笑っていた。
「...、マグルシュノワズはリゼエッタのものになり..リゼエッタは今西ソマトロアムに侵略されています」
アッシュの斜め後ろに跪いてファリスが女王にそう告げた。
アクアム女王は足を組み直し、
考えるように顎の下の手を置いた。
「..うむ。先刻報告は受けた。
助けてやりたいところではあるが..
我がシシィ国は海に囲まれ貿易に恩恵を受けている、よってどの国の配下につくこともなく
どの国も皆平等に扱い、我が国の自治を守る以外に軍は動かさない決まりだ」
アクアム女王の言葉を2人は黙って聞いていた。
「......だが、迷える青年達をほっぽり出すほど
心の狭い国でもないぞ。
貴殿らの針路が決まるまでは身の回りの世話くらいさせていただこう。」
女王は膝の上に両手をつき、
その上に顎を乗せてにやりと笑った。
アッシュは思いもよらない言葉に思わず笑顔を浮かべてしまう。
「アクアム女王...!」
「女王ではない!お姉様とお呼び!」
アクアムお姉様はそう言って近くにあった扇子を投げてきた。
それが額にヒットし、アッシュは頭を抱えた。
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