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第91話 波打ち際の王子たち

本当に自分でいいのだろうか。 もっと力があれば、彼も国も守れるのに。 次の日、アッシュは砂浜に座り込み 海を眺めながらひたすら、どうすればいいのかを考えていた。 守りたいものを全て守れる方法など無いように思える。 アッシュの心とは裏腹に、波は穏やかだった。 「……アッシュ」 不意に声が聞こえ、アッシュは振り返った。 髪を短く切ってしまったファリスが変な笑みを浮かべて立っている。 シャツにパンツスタイルの彼は、すっかりまごう事なき男子である。 「良いとこだろここ」 ファリスはアッシュの隣にどかりと腰をおろしては、 近くに落ちていた貝殻を拾って海に向かって投げた。 「王がなぁでっかいクルーザーが欲しいって言い出して、それでまあ色々あってエイリーとは許嫁になったんだけど お姉様は結構情に厚くて、王と全然合わなくってさ 他にも色々揉めてたんだけど、エイリーが嫁いでくるか私が婿に行くかって問題が決めてで破談」 ファリスは肩を竦めて笑った。 「アクアムお姉様は… 君のことすごく大事に思ってるみたいだった。」 「…うん…。昔、もっと大人を頼れって怒られた」 ファリスは膝を抱えて、拾った貝殻で砂浜に線を引いている。 そんな彼の長い睫毛を見つめ、それでも孤独を貫いていた彼が唯一自分に心を打ち明けてくれていたのだと思い知る。 「私は、忘れちゃってたんだけどね… そうやって言ってくれてたこと…シアーゼは覚えてたんだな」 ファリスは言いながら海を見つめた。 シアーゼのことが気がかりなのかもしれない。 大事にしたいと思っていてもアッシュにはなんと言って良いかわからず、歯痒さに泣きそうだった。 「…アッシュ、お姉様に何か言われても気にすることはないよ お前は余計なこと何も考えず自分のことを…」 ファリスはこちらに顔を向け、言葉は止まった。 アッシュが相当ひどい顔をしていたのだろう。 彼は泣き出しそうな顔で、頬に触れてくる。 「アッシュ…」 「…ご、ごめん…」 アッシュは泣いてしまっていたのかと焦って自分の頬を拭った。 涙は流れてはいなかったがそういう顔をしてしまっていたのだろう。 「なんで謝るんだよ?」 「…俺、は…俺は弱くて、何も…できなくて…」 口に出すと余計に惨めになってきて、アッシュは唇を噛んだ。 国もファリスもミミィグレースやシアーゼやマルク達も、何1つ満足に守れていない。 誰かの力で生かされ誰かの力で逃げてきている。 そんな情けない自分が、果たして王になんてなれるのだろうか。 それどころか、国をみすみす失ってしまうのかもしれない。 「…そうだよ、お前は弱い。」 ファリスにハッキリと言われ、 アッシュはさらに落ち込んでしまう。 しかし彼は、いきなり肩を掴んできてその宝石のようなエメラルドグリーンの瞳でじっと見つめてくる。 「剣の腕も私より弱いし、お姉様の扇子も避けられんし、童貞だったし!」 「…童貞は関係無いだろ」 「っでも、それの何が悪いんだ!?!」 アッシュは目を見開き彼を凝視した。 「弱かったら、助けてもらえばいい… 自分にできないことでも誰かが得意かもしれないし…自分は知らなくても、誰かは知ってるかもしれない… 一番よくないのは…弱いことでも何もできないことでもない… それと向き合わずに、いつまでもウジウジしていたり、誰にも頼らずに勝手に一人で逃げることだろ…!?」

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