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第92話 高い高い。

太陽の光に金色の髪が反射し、 眩しく、輝いている。 「1人で泣くのはよくない...って、 教えてくれたのは、お前だろ.. 自分だけでなんとかしようとするな」 彼からそんな台詞が聞けるとは思わなかったが、 それでもアッシュには救いになるような言葉で。 思わず彼を抱きしめてしまった。 「...ファリス....、俺は..君に助けられてばかりだ 君のことを守りたい、幸せにしたい..のに」 「いいよそんなの..私なんか」 「っよくない!私なんかとかいうなッ」 「...わかったよ声でかいって」 叫ぶとファリスは目を細めて耳を塞いだ。 「じゃあまずお前が幸せになれ。 そしたら私も幸せになれるから。な?」 ファリスは片手を背中に回し、 宥めるようにとんとんと叩いてくる。 「ファリス....」 「おら返事はどーした」 「.....うん...わかった..」 そのぬくもりが腕の中にあるだけで、 大事なものは何1つ失っていないような気にさえなる。 きっと何かあるはず。 1人ではできなくても。 「...っあ!そうだ!」 アッシュは不意に思い出して、顔を上げた。 「高い高いしてやる!」 「は、ぁ?なんでだよ」 「昨日約束しただろ」 アッシュはそういうや否や彼の腕を引っ張って立ち上がった。 引っ張られるまま立ち上がった彼を、 空に向かって抱え上げる。 ファリスは目を見開き、うわっ、と叫んだ。 「ばっか!恥ずいわ!」 「ファリスも重いなぁ」 悪態を吐くファリスにはつい笑顔になってしまう。

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