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第94話 王女の決意
「.....海で抱き合う!いいですわ!
バンバンバカンスですわ!アイアイアイランドですわ!」
急に明るい声が響き渡り、2人は砂浜を振り返った。
そこにはミミィグレースがオペラグラスを片手に立っていた。
「うわぁ!?」
「み、み、ミミィグレース!?いつの間に!」
「お兄様がお姉様を高い高いし始めたくらいからずっといましてよ?」
全く気配などなかったがバカップルの所業を
ほとんど見られてしまっていたらしい。
2人は慌てて身体を離した。
「.....身体は大丈夫なのか?」
「ええ。ご心配おかけいたしました」
ミミィグレースは上陸してから医師の元に預けていたのだ。
しかし今の彼女を見る限りは平気そうである。
2人は海から砂浜へ戻ることにした。
「ふふ、なんだか2人を見ていると
わたくしも新しい恋人が欲しくなっちゃった」
ミミィグレースはオペラグラスをしまいながら微笑んだ。
至近距離だったのにわざわざ拡大してみていたのだろうか..。
そして2人は砂浜に上がり、ミミィグレースの前に立ったところで重大なミスに気付いてしまった。
「あ」
アッシュが声をあげファリスも、あ。と声をこぼす。
そう、今、ファリスはまごう事なき男子であった。
しかも濡れてシャツが透けていてどうにも貧乳というだけではごまかせない事態である。
そしてミミィグレースはしまいかけたオペラグラスを取り出しファリスの胸のあたりを観察し始める。
「わっ!こ、これはその!」
「こらっ見るんじゃない!」
慌てて胸を隠すファリスとファリスを隠すアッシュだったが
ミミィグレースは静かにグラスを下げ、鼻血を拭きながら微笑んだ。
「慌てなくてもよろしくてよ。
わたくしとっくに知っていましたから」
「.....え?」
2人は同時に声を零し、顔を見合わせた。
「...そう、知っていましたわ。
このミミィグレース!
ファリスお姉様が実はお兄様だって事に!」
ミミィグレースはそう言いながら自分の胸に片手を当てもう片手は空へと伸ばした。
その謎の宝塚ポーズに2人はぽかんと口を開ける。
「い...いつから...」
「うふふ内緒。でもよろしくてよ!
わたくしはたとえ世界がなんと言おうとお兄様方の愛を応援いたしますわ!」
ミミィグレースはそう言い、笑顔を浮かべた。
アッシュは彼女の手を両手で取り、ありがとう...!、と泣き始める。
ガチっぽいからやめて、とファリスは2人を引き剥がした。
「だから....みんなで一緒に暮らしましょうって言ったの、嘘ではないのです。
..あのね、ファリス様、
お願いがありますの」
ミミィグレースはファリスに近付き、
いつものように微笑んだ。
薄化粧の顔は幼く、
まだ、子ども寄りの顔立ちではあったのだが
彼女からは誰よりも通った芯を感じた。
「戦争なんて終わらせましょう」
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