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第95話 執拗な質問
西ソマトロアム皇国は、
灰色に彩られた国であった。
要塞のような城は鉄と火薬の香りがする。
シアーゼは独房らしき暗い部屋に直行させられ、縄から鎖へと拘束具は変わり
両手は天から吊られ、身動きが取れなくなってしまった。
愛想のない兵は何も言わず重苦しい鋼鉄のドアを閉めて行ってしまい、部屋は暗闇だった。
「.....はぁ。流石にこれじゃあ逃げられませんね」
シアーゼは独り言を呟いては苦笑した。
こうしていると幼少の頃受けていた拷問の訓練を思い出す。
死ぬほど鞭で叩かれても、涙は微塵もでなかったものだ。
シアーゼは静かに目を閉じて、
只管心を無にした。
自分が闇に溶け込みそうな一歩手前で鋼鉄のドアは開く。
それがどのくらい時間が経った後なのかはわからなかった。
部屋に灯りがともり、入ってきたのは
鉄の鎧に身を包み兜のような仮面で顔を隠した男だった。
「貴様に聞きたいのはただ1つだ。
リゼエッタ国王、王妃、王子、王女はどこだ?」
冷たい声が重く響いた。
シアーゼは真顔のままその仮面をジロジロと観察した。
彼が皇帝、カイザーか。
ボス自らお出ましとは相当躍起になっているらしい。
「さあ。俺はただの使用人なんで」
答えると仮面の男はその鎧で守られた強固な拳でシアーゼの腹に重い一撃を食らわせた。
「質問に答えろ」
シアーゼは咳き込んだ。
胃の中のものと血液が床にぶちまけられる。
「...っ、答えて、いますよ。
俺はただ身代りで、残されただけで...」
男は再びシアーゼの腹を殴った。
髪を掴まれ、顔を近付けられる。
仮面の細い空洞の穴からは暗闇しか見えず、
本当に人間なのかと思うほどだった。
「では行方は知らんと?」
「....ええ、さっぱりですね」
「なるほどな。」
男は抑揚もなく呟くとシアーゼの首を掴み壁に叩きつけてはまた殴ってくる。
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