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第103話 光

「…俺なんかのために…泣かないで……」 気にしなくていいのに。 この空っぽの命なんて、いくらでも替えのきく存在なんて。 それでもあなた達は優しいから。 無になる 暗闇に溶け込む。 シアーゼはその手前でなぜか恐怖してしまい瞼を押し上げた。 瞼を開けてもその先は暗闇で、 とうとう自分は闇になってしまったのだと 苦笑するしかなかった。 ガタガタと身体が震える。 それがなんなのか、わからない。 本当にこれでよかったのだろうか? 何が正しかったのか、わからない。 自分がいなくなった後の世界はどうなのだろう。 きっと大して何も変わらないはずだ。 そうでないと困る。 ファリス様は怒るだろうか。 泣いてしまうだろうか。 あの人は、また。 別に、一人だなんて思ったことはない。 いつだってあなたがいたから。 あなたを取り巻く全てと、居たから。 俺はちゃんと、あなたの為になっていたのでしょうか。 「……まだ……、しにたく…ないな…」 つ、と頬の涙が伝っていった。 その瞬間、目の覚めるような轟音が鳴り響き 暗闇に光が差し込んだ。 眩しくて思わず顔を背ける。 「シアーゼちゃん!」 声が聞こえ、瞬きを繰り返しながらそちらを見た。 明るい光の中、金色に光る髪の毛と青い瞳とアホ面と。 彼は呆然と酷い姿になっているシアーゼを見つめていたが、やがて涙を浮かべて抱きついてくる。 「ごめん…遅くなった……」 身体から伝わる熱いその温度を思い出し、 シアーゼはようやく頭が動き出し 自分がまだ生きていることを実感した。 「…ま、…るく……?」 掠れた声が喉の奥からこぼれた。 鎖を外され肢体が保てなくなり彼の身体の中に落ちた。 「…こんなになって…バカだよ、君って人は本当に…」 闇に溶け込みそうな感覚が消え失せ、 シアーゼは自分という存在が戻ってきているのを感じた。 マルクの暖かい掌が頬に触れてくる。 彼は、眉間に皺を寄せて苦しそうな顔をした。 その顔を見ていると、不意に胸が詰まって身体が震え始める。 恐怖や痛みや、様々なものを思い出して それを全部彼の身体に預けられているような、 そんな安堵感に包まれて 力を振り絞って彼の身体に抱きついた。 「…っ、……」 思い出したものが彼の温度で溶かされて、 眼から溢れ出していた。 「…シアーゼちゃん…っ」 マルクに身体を強く抱きしめ返される。 身体も痛くて酷く眠くて、それでも、 その温度に、無常に安心した。 空っぽの胸が実は沢山のものでいっぱいだということを思い出す。 一人ではない。 今も、一人ではないのだ。

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