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第115話 恋とスパイは使いよう
リゼエッタ城は以前とは見る影もなく荒れていて
今は再建のためあちこちで大工仕事をする音が聞こえる。
故に広間にはまだ椅子などはなく資材などが散乱している状態だ。
そんな様子を眺めていると、
突然アッシュが深々と頭を下げてきた。
「....皆を救ってくれて、感謝する...
あなたにはどんな風に礼を尽くせばいいのか..」
そんな風に言われ、シアーゼは目を見開いた。
「やめてください、
そう軽率に頭をさげるものじゃありません」
彼は王族でここは彼の国だ。
誰かに見つかれば大事である。
シアーゼはなんとか顔をあげさせようとアッシュの肩に手を触れる。
「どれだけ下げても下げたりないっ!
あなたは俺たちも父も母も、使用人たちまで救ってくれた英雄だ...!」
「そんな大袈裟な...」
「大袈裟なものか!」
シアーゼは苦笑しそうになったが顔を上げて真っ直ぐにアッシュに見つめられ思わず息を飲んでしまった。
金色の瞳は真剣な眼差しで、
その心に深く刺さるような光は眩しかった。
「.......大袈裟ですよ。
俺は、誰かが死ねばファリス様が泣くと思ったんです。
だから行動したまでのこと。」
それは本意だったのだが、アッシュは至って真面目腐って、どう償えばいいのかなどと考えてそうな表情をしていたので
シアーゼはやれやれとため息を吐いてしまう。
「それに生き残れたのは、
皆さんの意思、皆さんの力です。
まだ混乱が収まったわけじゃないんですから、
今後もその力を如何なく発揮してくださいませ」
そう言いながらぽんぽんと彼の肩を叩いてやった。
アッシュは泣きそうな顔をしていたが、
なんとなくファリスが彼に惹かれた理由がわかった気がして
やりきれないような、納得したような妙な気分に苛まれる。
だが、もう自分が側にいなくても大丈夫なのだろう。
「......ファリス様のこと、よろしくお願いしますね」
思わずそう呟いてしまうと、アッシュは驚いたようだった。
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