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第116話 恋とスパイは使いよう

「……俺に、務まるのでしょうか…」 アッシュは俯き、自信なさげに呟いている。 「俺は弱く、未熟で…経験も足りなくて…」 「そうですね。でもそんなあなただから、 ファリス様は選んだんですよ。きっと」 彼が、自分と比べて未熟だと言っているのが 何故だか妙に悲しい気がして シアーゼは彼の戸惑う瞳を覗き込んだ。 「共に歩むということは共に成長していくということでしょう。別に未熟でもいいじゃないですか 二人でどうにかこうにか補い合って、生きていければ。」 ずっと、二人で生きてきた。 どんなに辛い時でも、悲しい時でも、痛い時でも。 背中を預けて戦った。時には競う事もあった。 どうすればファリスが喜ぶのか、怒るのか、全部わかっていた。 同じ経験をして、同じ傷を持って、同じ場所が欠けている。 本当は、立場なんかではない。 痛い程理解することは出来ても、きっと癒すことはできないのだろう。 シアーゼは、そう分かっていた。 自分ではきっと、ファリスを本当の意味で救う事はできないのだ、と。 「すまない…あなたに弱音を吐いてしまうなんて…。 今はまだ…俺は全然ダメで、何も出来ないかもしれない。 でも俺は、もっと努力して… ファリスを必ず幸せにします。 そうしたいと、強く…思っているんです」 愛することも、愛されることも知らなかった。 アッシュはきっと、それがどういうことなのか知っている。 教えることもできるのだろう。 シアーゼは小さく頷いて、その眩しく輝く金色の瞳を眺めていた。 「ええ。まぁあなたがファリス様を裏切って不貞を働くようであれば 死んだ方がマシだと思えるような苦痛を味わって頂く準備だけはしておきますから」 「そ…そんな事はしない…」 「どうでしょうね?バレなければいいと思ったら大間違いですよ? バレないわけないんですからね」 「えぇ……こわ…」

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