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第117話 恋とスパイは使いよう

「.....ちょっと、変な会話しないでもらえます?」 突然2人の間にファリスが現れ、 シアーゼとアッシュは飛びのいた。 「うわあ!」 「ファリスさま...びっくりしたぁ」 ファリスは片手に無駄に豪華な椅子を軽々と持ったまま 不機嫌そうな顔をしていた。 「あのさぁ、嫁入りする娘についてみたいに言ってるけどねお二方。私も一応男子ですから? 守りたいもんくらい自分で守ります、よ!」 ファリスはそう言ってどすんと音を立てて椅子を床に設置した。 王様の椅子なのではと思っていると ハイ座りなさい、と命令されシアーゼは仕方なくそちらに腰を下ろした。 「そういう会話は私に一度でも勝ってから言ってもらえますう?」 ファリスは腰に両手を当てながら2人を睨んでくる。 確かにシアーゼも、戦闘という分野においてはファリスに勝ったことはなかった。 一体どこから聞いていたのかは定かではないが、 彼の体育会系な解釈にシアーゼは思わず笑ってしまう。 「俺はファリス様より稼いだことあるので言う資格ありますね」 「ぐっ...」 シアーゼの言葉にファリスは顔を顰めた。 「じゃあ俺も背丈という点では勝ってるので...」 アッシュも追撃してきたので、ファリスは顔を赤らめて、もおお!可愛くないぞお前ら!と怒り始める。 そういう所が彼は可愛いのだと、くすくす笑ってしまう。 「とにかく!私は!強いので!」 ファリスはそう言ってシアーゼに向くと、 そのエメラルドグリーンの瞳で見つめてくる。 「.....もうあんな真似すんなよ」 必死な瞳で呟かれ、シアーゼは彼の瞳を只管、 脳に焼き付けるように見つめ続けた。 ああ。ああ、ファリス様。 やっぱり、あなたのために生きて死ぬ事が、 俺の人生の全てなのだと思ってしまいます。 そんなことを言うとまた彼は怒るだろう。 だからこれはきっと、心にしまったままにしておこう。 「......はい。ファリス様」 俺はきっと、世界一幸せな従僕に違いない。

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