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第121話 恋とスパイは使いよう
シアーゼは、マグルシュノワズ城の屋根裏にある秘密の空間で兵士達の噂話を聞きながら本を読んでいた。
幼少期に勝手に改造して部屋のようになっているが、ここに来る道は迷路のような換気口から天井裏を這ってくるというサバイバルが必要である。
故に誰も寄り付かないし、そもそも存在すらも知らないだろう。
一人になりたくなったり、あまりにもファリスの叫び声が煩くてノイローゼになりそうな時などに使っているシアーゼだけの秘密基地だった。
そんな誰も来ないはずの屋根裏の何処かから、ゴソゴソという物音が聞こえてくる。
シアーゼは、ネズミでも入り込んだかな、と顔を上げる。
すると、丁度目の前辺りの床、正しくは天井の板が外れ金色の髪がひょこりと現れた。
やがて侵入者は振り返り、
シアーゼを見つけると満面の笑みを浮かべる。
「いたいた!シアーゼちゃん!」
「マルク…あなたでしたか…」
その煤で汚れた顔にシアーゼはため息を溢してしまう。
マルクは四角く空いた穴から妖怪のように這い出てくる。
「よくここが分かりましたねえ…なんか怖いですよ?」
またもや秘密基地が見つかってしまい、シアーゼは苦笑した。
「へっへー散策しすぎてもう隠しダンジョンもお手の物ですよ。見てみて小さなメダル見つけちゃった。」
マルクはそう言ってずいっとシアーゼの顔の前にキラリと光るメダルを見せてきた。
その少年のような笑顔にシアーゼは怒る気も失せて顔の埃を払ってやった。
彼は勝手にシアーゼの横に体育座りしてくる。
狭いので天井というなの屋根の裏側に頭が当たっていた。
「シアーゼちゃん追って小さなメダル集めていのちのゆびわ手に入ったらロマンチックな告白になるかしら?
そしたらときめく?」
マルクはまたそんな事を言っては不敵に笑って小首を傾げてくる。
シアーゼはやれやれと思いながら本を閉じて傍に置いた。
「って先にネタバラシされたらなぁ」
「あ、……しまった」
本当に今気付いたらしくマルクは口を開いては、頭を抱えている。
そんな姿が面白くて、シアーゼはくすくす笑ってしまう。
「本当天然なんですねえあなたって人は」
「う…」
言い返す言葉がないのかマルクは眉根を寄せた。
彼は大体は余裕そうにしているし頭も良い方なのだが、
たまにこういう事や盛大な読み違いをやらかしてしまうのだ。
女ったらしだったくせに、シアーゼちゃんが好きだと言って1年近くも追いかけてくること事態も盛大な読み違いであるし。
だがシアーゼも、こんな風にダンジョンの奥までのこのこ追いかけてくる彼に
自分も何かおかしな読み違いをしつつあるのも確かであった。
「こんな狭っくるしい所でロマンチックも何もないでしょうに」
「…俺のロマンスは狭いとこから始まったんですが」
マルクは拗ねているように口を尖らせ、
折角久々に会えたのにぃ、とぶつぶつ言っている。
諜報活動で不在のことが多いシアーゼだったが、帰ってくる度についつい隠し部屋に引きこもってしまっていた。
その所為でマルクは自分の仕事をほっぽり出してダンジョン攻略をし始めるらしい。
決して逃げているわけではない、とシアーゼは思っていたが
どうにも彼を目の前にすると落ち着かなくなるのも事実だった。
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