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第122話 恋とスパイは使いよう

「しょうがないですね。はい、片手出してください」 シアーゼは片手の掌を上に向けて彼に差し出した。 拗ねていたマルクは不思議そうにしながらも、 シアーゼの手の上に片手を差し出してくる。 「うん?」 「左手!」 「は、はい」 マルクは慌てて手を差し替えた。 重ねられた彼の左手の薬指に、シアーゼは輪っかを通してやった。 それは銀色に光を放つ指輪だ。 「小さなメダル集めたわけじゃないんですけど。 はくあいのゆびわです」 そう言って彼の手を離すと、 マルクは呆然と指にはめられた指輪に見入っていた。 ダンジョン攻略のご褒美、という訳ではないが 図らずともネタバラシをされてしまったのでさっさと使うことにした。 「ふふ。この指輪手に入れたもののどこで使おうかって思ってたんですけどねえーまさかあなたにあげることになるとは。 ときめきました?」 「……。」 マルクはいつまでも指輪に目を落としている。 いつも小うるさい彼がこうも無言だとよっぽど気に入らなかったのかと少し不安になる。 微笑んでいたのが段々苦笑になってきてしまっていると やっとマルクは顔をあげた。 「…シアーゼちゃん」 なんとも言えない表情で名前を呼ばれシアーゼは無駄に 緊張してしまう。 よく見るとマルクの瞳には涙が溜まっていた。 「……マルク?」 不安になって呼んでしまうと、マルクは両手で口元を覆った。 そして泣き始めてしまう。 「どうしよう…めちゃくちゃ……嬉し…」 女子のように泣くマルクにシアーゼは、はは…、と笑ってしまう。 そこまで喜ばれるとは思わなかった。 普段少し彼に冷たくしすぎているのだろうかと申し訳なさも感じる。 「大の男が指輪くらいで泣かないでくださいよ」 「だ、だってえ...」 「推しのライブ後じゃないんだから…」 ぐすぐすと鼻を啜って泣いているマルクが、不覚にも可愛いと思えてしまって シアーゼは呆れながらも指先で彼の頬に伝う涙を拭ってあげた。 「シアーゼちゃんは…俺のことどうでもいいんだって思ってたから…寧ろ、嫌われてるんだろうって…」 「……そうですねえ」 「俺だって…自分で、こんなに諦めが悪いなんて思ってなかったんだよう…」

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