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第123話 恋とスパイは使いよう

今までシアーゼにとっては、恋だのなんだのはただの道具に過ぎなかった。 世界の中心はファリスで、それは今もそうなのかもしれない。 だけど、ファリスの事でいっぱいだったはずのシアーゼの世界に 今は少しだけ、妙なノイズのようなものが入っているのである。 それは邪魔なもの、なのかもしれないけれど。 「分かんないんですよ。俺は、人を好きになったことがないので。…これがただの性欲なのか それとも、恋なのかがね」 シアーゼは彼に顔を近付けて、ぽかんとしているマルクの唇に自分の唇を重ねた。 彼の温度が伝わってきて、確かに鼓動は早くなるのだ。 「俺は少しだけ、あなたが追いかけてきてくれて嬉しいって思ってますよ。」 軍で一番偉い人の癖に、一使用人を相手にしなくても引く手数多のはずなのに。 顔を煤だらけにしてカビ臭い屋根裏にのこのこやってくる彼が、ファリスかそれ以外かの世界にまで侵入してきているのだ。 「…シアーゼちゃん」 ぽかんとしていたマルクはぱちぱちと瞬きをしている。 「もしかして俺今…プロポーズされた?」 「いいえ、いいえ。全く。」 「えええ!?キスしたじゃん!?」 「キスくらいするでしょう大人なんですから」 「しないでしょ!だ、ダメなんだぞ好きな人以外とキスするなんて…!!」 「どの口が言うんですか…」 シアーゼは呆れながらも、顔を真っ赤にしているマルクが面白くて 床を這うようにして彼に顔を近付けた。 「マルクは俺のこと好きなんだから、いいんじゃん…?」 「え……、っ、ん」 再び彼の口を唇で塞いで、今度は唇をくっつけ続けていた。 果たして恋か性欲か。そんなことを考える余裕がなくなるくらいには。 そしてマルクはもっとそうなのか、彼の腕に抱き留められてより深く口付けられてしまう。 「ん、ん……」 頭の後ろを撫でられるようにマルクに抱き締められ、下唇を喰むようにされると シアーゼも彼の唇を貪ってしまう。 そして気付けば夢中になっていて、彼の首へと腕を回して身体を密着させてしまっていた。 「っ…はぁ…、ん」 シアーゼは、床という名の天井の裏側に押し倒され 彼の舌が口腔に侵入してくる。 シアーゼはすぐさまそれに応えるように、自分の舌を絡めて行った。 「ぁ…、っ…ん、…」 口の端から唾液と、熱っぽい吐息が溢れ始める。 やがて唇が離れると、妙に名残惜しい気がしてシアーゼは唇を舐めながら、彼の青い瞳を見上げた。

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