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焼きもち
「宮尾さん、真生にくっ付き過ぎ‼」
「別にいいだろう」
「良くない‼」
涼太が腕にしがみついてきて、自分の方に引っ張ろうとしたが、葵も負けてはいない。空中で火花がバチバチと飛び交う。俺を挟んで睨み合い、またぷいっとそっぽを向く二人。いまからこんなで大丈夫か?一緒に暮らすこと自体無理だろう。そんな険悪な状況を変えたのは蓮だった。
「おかえり‼」
大人用のスリッパを履いてパタパタと足音を鳴らしながらひょっこり帰って来た。右腕に紫色の花束をしっかり握り締め、左手にはケーキの箱をぶら下げていた。
「ただいまでしょう蓮くん」
誰よりも素早く動いたのは涼太だった。
「偉いね、重かったでしょう」
「ううん」
蓮は、涼太に頭を撫でて貰い目をキラキラと輝かせた。
「こっちはね、りょうにいにに。んで、こっちはえっと・・・」
紫の花束を涼太に渡すと、俺をじっーーと見詰めてきた。
「なんでおててにぎってるの?なんで?なんで?なんで?」
あぁ、始まってしまった。蓮の何で攻撃が・・・こうなるとなかなか止まらないっていうか、葵いい加減手を離さんか‼お前のせいだろが‼
ぶんぶん手を振ると、葵が痛いくらいに力を籠めてきた。
「だって、あおにいにも蓮のパパと仲良しだから」
「ふぅ~~ん」
蓮は首を傾げ、目をパチパチさせながらしばらく考え込んでいた。
「素直に言えばいいのに。パパの恋人だって・・・」
「蓮に言っても分からないよ」
「そうかな?」
涼太は鼻歌を歌いながら花瓶を探しにキッチンへ向かった。
「これねルピナスっていうんだよ。鈴なりに紫の小さな花をたくさん咲かせているでしょう。花言葉は確か、想像力といつも幸せだったかな?」
「蓮が選んだのか?」
「うん‼」
蓮がニコニコしながら俺と葵の片方の膝の上に登ってきた。ケーキの箱は葵が受け取った。
「ケーキもれんがえらんだんだよ」
得意気な顔付きになって、早く早くと催促され葵がそおっと箱を開けると、ハートの形のチョコケーキが入っていた。しかも、白いプレートには(パパ、ママ、あおパパ結婚おめでとう)と書かれてあった。
マジか・・・
今度は俺達が固まる番だった。
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