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同棲生活スタート

次の日にはアパートを引き払った涼太が、葵の家に引っ越して、同棲生活が始まった。 最初の一週間は呆気ないくらいあっという間に過ぎて行った。 「ただいま」玄関のドアを開けると、ふわっと鼻を擽るだしのいい匂い。 「おかえり、パパ‼」 蓮がバタバタと駆けてきた。その後ろには笑顔の葵。 「お帰り真生」 「悪いな、毎日、蓮の送迎と遊んでくれて」 ここ2日忙しく、朝は7時出勤の、夜も7時まで仕事で、蓮は涼太や葵に任せっきりだ。 「同棲しているんだ、恋人が忙しい時くらい手伝わないと」 「助かるよ。本当にありがとうな」 「いちいち言わなくてもいいよ。蓮、りょうにいにに、パパ帰ってきたよって、言ってきてくれる?」 「はぁ~~い‼」 元気に返事して、奥のリビングへ駆けていった。 「真生・・・」 不意に名前を呼ばれ、抱き寄せられ、口付けが唇に触れてきた。 「愛してる」 耳元で甘く囁かれ、こくりと頷くと柔らかく目を細め、繰り返し口付けをされた。 蓮の為、二人と付き合う事を決意した俺。 まさか葵とも恋人同士になると思ってもいなかったから、何だか気恥ずかしくて、恋人じみた行為にまだ慣れていない。 「ただいま」リビングに顔を出すと、台所に立っていた涼太がすぐに気が付いて、ガスの火を弱め、俺の所に来てくれた。 「お帰り真生」 首に抱き付いてきて、唇に、頬に、鼻先に口唇を押し付けてきた。 葵も後ろから抱き付いてきて、項や、顎に口付けをしてくれた。 すでに日常の光景となっていて、蓮はさほど驚かずきょとんと眺めていた。 夕飯を四人で仲良く囲み、葵が蓮と風呂に入っている間、涼太は、洗濯ものを畳み、俺は唯一出来る皿洗いに勤しんでいた。 「ねぇ、真生、今日金曜日だね」 「あぁ、そうだな」 「約束したこと忘れてないよね?」 「も、勿論だよ」 動揺しまくりで、すっとんきょうな声が出てしまった。 それは初日の事。 四人で寝起きする部屋はリビングの隣の畳ほどの和室。二階にも部屋はあるが涼太と葵の喧嘩の原因になるからと、ここを使うことにした。 布団を敷いて端っこに蓮を寝かし付けると、おもむろに壁に掛けられていたカレンダーを一枚めくる涼太。その裏に何やら書き始めた。目がいつになく真剣で怖い。 1、蓮の面倒は、三人で分担する 2、蓮の送迎は、基本宮尾 3、家事全般担当は、基本涼太 4、座る位置は、真ん中真生と蓮固定。宮尾・涼太日替わりで交代 5、平日基本エッチ禁止‼   真生・蓮二人と添い寝は、月・水が宮尾で火・木は涼太 6、週末は蓮を早めに寝せて、三人で仲良くする 7、言いたい事はちゃんと顔を見て言う 8、蓮の前で喧嘩はしない 「涼太、そんなにでかでかと書かなくても」 「宮尾さんに恍けられるの嫌なの」 涼太は、書き終わるとそれを壁に張った。 「目を逸らさないで、ちゃんと読んで」 「はいはい」 葵は頭を掻きながら覗き込み、はぁ⁉と声を上げた。 俺も思わず二度、三度見してしまった。 そう今日は、同棲して初めて迎える週末の金曜日。

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