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あおにいににはパパがいるでしょう‼

「お布団が濡れてて、気持ち悪かったんだね。もう泣かなくて大丈夫だよ。りょうにいにとお風呂に入って来ようね」 「ママは・・・?」 涙を手でゴシゴシと擦りながら辺りをキョロキョロ見回す蓮。焦点の合わないつぶらな瞳は、やがて大好きな涼太をとらえると、燦々と輝き出した。 「りょうにいに~~‼」 蓮は迷う事無く涼太に飛び込んでいった。 「俺じゃないのかよ」 葵がふてくされるのも無理がない。でも、蓮にとって涼太が母親代わり。そこはちゃんと葵も理解しているから、二人を風呂に送り出し、濡れた布団の後始末を嫌な顔ひとつしないで黙ってしてくれた。 「れん、りょうにいにのおひざのうえでたべたい」 「いいよ、おいで」 「やったぁ――‼」 蓮はそんな訳で朝から大好きな涼太にべったり。 早速、膝の上にちょこんと座り、ママ特製のハム卵サンドを口一杯に頬張っていた。 「あおにいに、寂しいな」 葵がぼそっと呟くと、蓮は澄ました顔で言い返した。 「あおにいにには、れんのパパがいるでしょう‼」 「そうだった」 葵が俺を見て膝をポンポンと叩いた。 「真生、おいで」 一瞬固まった。 「あのな葵・・・」 呆れながら、文句の一つでも言ってやろうと考えていたら、脇の下に手を差し伸べられ、そのままひょいと軽々と抱き上げられ、彼の膝の上に座っていた。 「暴れると落ちるぞ」 「俺、子供じゃないから‼」 「分かってるよそんなことくらい。ほら、口を開けろ」 鼻の先にサンドイッチを差し出されツンツンされた。仕方ないからぱくっと一口だけかじった。 ちらっと涼太の方を見ると、かなり不機嫌そうにしかめっ面をしていた。 「宮尾さん‼10分交代ね‼」 「エェ~~!」 「エェ~~じゃない。僕も真生を抱っこして食べさせてあげたい」 ぷーーっとふくれた涼太の怒った顔もなかなか可愛い。 本当に朝からどたばたと賑やかだ。 「あおい・・・そ、その・・・・」 「ん!?」 「ちょっとくっつき過ぎ。耳に息が掛かってくすぐったい」 「わざとだよ。真生があんまりも可愛いから」 そう言って、むぎゅーーっと抱き締められた。

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